「終わり? これで良いのか?」
「……はい。……ガウンではありませんから、これで宜しいかと」
「おー、こんな感じだろ」
「本当? 着方、おかしくない?」
『おかしくないと思うよ。大丈夫大丈夫』
ハイダラはレンジィが借りて来てくれた美しい浴衣を見て目を輝かせたが、いざ着る段になってあれこれ心配がつのって来たようだ。着付けるカディムの手を煩わすほどそわそわと身じろぎをし、帯を締め終えたと思ったら今度は皆に質問を繰り返し、くるくる前後を見せて回る有様だ。
太鼓判を押してもらって漸く安心したのか、次は既に着付けを終えているレンジィのまわりを回って、浴衣を観察し始める。
「前にレンが着ていたものとも、私のとも、少し違う。ほら、縦に畝が」
感心し切った声音で呟きながら布地に触っているハイダラにレンジィが頷いた。彼が着ている浴衣は紺地に水色で渦を巻く模様が染め抜かれた、いかにも夏らしく瑞々しい柄もので、細かな縦の畝のおかげかさらりとした独特の涼しい手触りだった。
ハイダラの浴衣は紫がかった濃い鉄紺に地模様として綺羅を散らし、三日月の様な白い弧の模様が描かれたもので、こちらも見事だ。
「なんか、すげえ沢山種類があるらしいぞ。形はほとんど一緒だけど、布地の材料とか、織り方とか、柄とか」
『種類が多いのは女性用のものだけかと思ったら、男性用も随分こっているんだねえ』
ロージャが感心した様に、飾りの鉱石をふわりと光らせた。
「キモノと同じなのかな。竜胆が、キモノにはとても沢山の種類があると言っていた」
「着物は、更に多くの種類がございますよ……というより、浴衣も、着物の一種でございます故。……さあ、ハイダラ様、御用意が整いました」
カディムが差し出したのは白灰色の外套だ。
というか、ついさっきまで外套の形だったものだ。
この外套はいつも、いつの間にか僅かに形を変える。襟の形が立襟になったり、逆になくなったり、裾が広がったり、丈が伸びたり、と。——それにしても今回は大きく形を変えたものだった。それはまるでストールの様な一枚布に見えた。布の縁には様々な飾りが下がりしゃらしゃらと揺れているが、それでも元があの外套だとは想像出来ない形である。
ハイダラは外套だったものを受け取ると、軽く手に掛けた。
「それじゃあ、そろそろ行こうか」
外套の変化が大きかった所為か少し驚いた顔をしていたレンジィも祭会場の方向を見やって頷く。日は暮れて、早くもあちこちから華やかな囃子や人々の笑いさざめく声が聞こえ始めている。
「うん、暗くなる前に、少し辺りを見て回ろう。屋台も出てるらしいぞ」
『欲しいのは、昼に見た林檎の飴? 本当、甘い物には目がないんだから』
ロージャが呆れた様な口振りで言うが、どことなく楽しそうな気配までは隠せない。
紅鋼玉のようにきらきらしていたあの飴は中々珍しかった。
「あれ、美味そうだったよなあ……。カディムはああいうお菓子とか作れるかい?」
ゆっくりとした足取りで歩きながら、レンジィが問う。するとカディムは考える様に黒手袋をした手を口元へやり、
「飴がけの菓子は、手作りするとなると些か手間でございますね。飴は温度が……」
と、飴細工の話や林檎飴の作り方の予想を始める。
そんなたわいもない話を交わす声も、いつしか賑わいの中に紛れて行った。
------------------------------
【Summer Vacation Part ”Nighttime”】より一部抜粋
(以下PL)
--------------------
ハイダラPLです。
ジャフティ(271)さん主催『Summer Vacation』、夜の部。
こちらもレンジィPLさんからの頂き物。(*ノノ)
ゆ、ゆ、浴衣ですよー!!(叫)
上ではプロフサイズを飾らせて頂きましたが、PM全員一緒の一枚絵も飾ってしまう!
ふふふ、素敵でしょう?
何だか見ているだけでお祭りの喧噪が伝わってきて、楽しくなります。
ハイダラが着せてもらったのは、まるで夜空のような綺麗な浴衣。
三日月と星屑が淡く光っているような、浴衣と着物の中間っぽい生地です。帯も合わせた色味で紫系。
こいつは外套を手放さないので、どうしても正式な浴衣の着こなしとは少し外れてしまうのですが、とても綺麗に纏めて下さって……!(感涙)
レンジィさんは正統派ですね!
さらっとぱりっと、涼しそうな手触りが伝わってきそうな浴衣に、粋な帯。
夏祭りらしいお姿です。笑顔もレンジィさんらしくて素敵だ。(*ノノ)
ロージャさんに引っ掛けられた籠や、カディムが持ったバケツ、その中の花火等、小物も光ります!
あと、板塀に貼ってあるチラシが読みたくてたまらない。こういう細部までネタを仕込んだ描き込みがあると、宝探しのようで楽しみも倍増です。
ちなみに、カディムが昼も夜も困り顔なのは、仕様です。(真顔)
レンジィPLさん、いつも本当に本当にありがとうございます。(礼)
日記の合わせも楽しいし、素敵な絵まで描いて頂けて、毎回幸せでくらくらしています……!
お忙しい所、本当にありがとうございました。大事にします!(*´▽`*)
主催のジャフティさん、コミュでもお世話になっております。
素敵なイベントありがとうございました!
この記事にコメントする
- ABOUT
消えてしまった手紙と日々の覚え書き
- ENo.1457
- アーカイブ
- ブログ内検索
- カウンター
- アクセス解析
PR