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白灰色の畔
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(以下PL)
 







花の香りの中で目を覚ますと、
途方に暮れた様子のしもべが私の顔を覗き込んでいた。

「……寝起きに見るのが、お前の顔と言うのは……、頂けないな」

あれ? なぜだろう。口元がもふもふする。
しもべの方は明らかにほっとして表情を緩めた。

「……私が、お分かりになるのですね……。ご無事で、何よりでございます」

「お分かりになるに決まっている。ご無事も何も、私は……、あれ? 私、何をしているの?」

黒い小さな後ろ姿を追いかけて、
そのあと、美しく甘い花園に迷い込んで、
それから、……それから、覚えていない。

「急に、駆け出して……、私がハイダラ様に追いついた時には、既に、お眠りになっておいでで……」

「眠って……?」

確かに、まだ少し眠い。
眠気の名残を追い払う様に額に手を当て……、あれ?
当てたら妙な感触に触った。
おかしい。
もふもふする。

「あ、あの……、ハイダラ様……」

「……、……」

「……な、なんと申し上げれば良いのか……」

「待て。今、頭の中を整理している」

「御意」

「…………、…………」

私は起き上がった。
しもべ——カディムは、跪いたままだ。
元々、無駄に大きな体をしたカディムだが、これほど大きくはなかった。
いや違う。カディムが大きくなったのではない。

「私が小さい」

「御意」

「私が、もふもふしている」

「正確な触感までは分かりかねますが……、見た目は、はい、確かに」

「何と言うか……」

「そのお姿は……」

「「……、……ぬいぐるみ」」

そう呟いてから、漸く私はいつの間にか手にしていた手紙に気付いた。
ざっと目を通しながら立ち上がってみる。本当に随分と目線が低い。
ふわふわした白灰色の布(というか、肌か?)には、沢山の飾りがついていたのでひとまずは安心だ。
飾り達が無くなっていたら一大事だった。

「兎に角、ここにいても仕方がない。合流もしないといけないし」

自分の体をもう一度見回す。
鳥……、孔雀だ。
要所がきらきらと光る姿に、私は気を良くして歩き出す。
自然に『ちまちま』と幻聴が聞こえそうな足取りになった。
成る程ぬいぐるみとはこういう風に歩くのか。

「……! 危ない!」

一、二歩歩いたところでつんのめって、ぺふんと転んでしまった。
カディムが慌てて私を抱き起こし、そっと塵を払う。

「大丈夫! おろせ! 歩く!」

じたばたと暴れ、腕(今は翼の形をした綿入れなのだが)でカディムを叩くと、奴はしぶしぶ私を地面におろした。
手にしていた手紙をしもべに押し付けてから、私は翼の形の腕を組み、カディムを見上げる。
心配そうなしもべを安心させるのも主の役目だ。

「これは、お祭りだ」

「お祭り、でございますか」

「手紙にも書いてあったろう? ハロウィン。確か、仮装をして、菓子を貰って、悪戯まで出来るという良い祭」

「……少し違う様に思いますが」

「さあ、悪戯をしに行こう!」



私は走り出した。


そしてまた転んだ。




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【Hallo Ween 2008】より



(以下PL)
 









ハイダラ:……!(じたんばたんしている)
     ……!!(じたんばたんしまくっている)

     可愛い! 皆可愛い!
     語彙が貧弱なのが本当に申し訳ないけれど、本当に可愛い……!!

     それぞれの特徴というか、らしさがよくでている……、
     というか、なんだいこの可愛いロージャは!!
     (■レンとロージャの猫姿はこちら)(ブログ)


     ちびっこー! 可愛いー! お澄ましー!



     (以下PL)
 







「終わり? これで良いのか?」
「……はい。……ガウンではありませんから、これで宜しいかと」
「おー、こんな感じだろ」
「本当? 着方、おかしくない?」
『おかしくないと思うよ。大丈夫大丈夫』

ハイダラはレンジィが借りて来てくれた美しい浴衣を見て目を輝かせたが、いざ着る段になってあれこれ心配がつのって来たようだ。着付けるカディムの手を煩わすほどそわそわと身じろぎをし、帯を締め終えたと思ったら今度は皆に質問を繰り返し、くるくる前後を見せて回る有様だ。
太鼓判を押してもらって漸く安心したのか、次は既に着付けを終えているレンジィのまわりを回って、浴衣を観察し始める。

「前にレンが着ていたものとも、私のとも、少し違う。ほら、縦に畝が」

感心し切った声音で呟きながら布地に触っているハイダラにレンジィが頷いた。彼が着ている浴衣は紺地に水色で渦を巻く模様が染め抜かれた、いかにも夏らしく瑞々しい柄もので、細かな縦の畝のおかげかさらりとした独特の涼しい手触りだった。
ハイダラの浴衣は紫がかった濃い鉄紺に地模様として綺羅を散らし、三日月の様な白い弧の模様が描かれたもので、こちらも見事だ。

「なんか、すげえ沢山種類があるらしいぞ。形はほとんど一緒だけど、布地の材料とか、織り方とか、柄とか」
『種類が多いのは女性用のものだけかと思ったら、男性用も随分こっているんだねえ』

ロージャが感心した様に、飾りの鉱石をふわりと光らせた。

「キモノと同じなのかな。竜胆が、キモノにはとても沢山の種類があると言っていた」
「着物は、更に多くの種類がございますよ……というより、浴衣も、着物の一種でございます故。……さあ、ハイダラ様、御用意が整いました」

カディムが差し出したのは白灰色の外套だ。
というか、ついさっきまで外套の形だったものだ。
この外套はいつも、いつの間にか僅かに形を変える。襟の形が立襟になったり、逆になくなったり、裾が広がったり、丈が伸びたり、と。——それにしても今回は大きく形を変えたものだった。それはまるでストールの様な一枚布に見えた。布の縁には様々な飾りが下がりしゃらしゃらと揺れているが、それでも元があの外套だとは想像出来ない形である。
ハイダラは外套だったものを受け取ると、軽く手に掛けた。

「それじゃあ、そろそろ行こうか」

外套の変化が大きかった所為か少し驚いた顔をしていたレンジィも祭会場の方向を見やって頷く。日は暮れて、早くもあちこちから華やかな囃子や人々の笑いさざめく声が聞こえ始めている。

「うん、暗くなる前に、少し辺りを見て回ろう。屋台も出てるらしいぞ」
『欲しいのは、昼に見た林檎の飴? 本当、甘い物には目がないんだから』

ロージャが呆れた様な口振りで言うが、どことなく楽しそうな気配までは隠せない。
紅鋼玉のようにきらきらしていたあの飴は中々珍しかった。

「あれ、美味そうだったよなあ……。カディムはああいうお菓子とか作れるかい?」

ゆっくりとした足取りで歩きながら、レンジィが問う。するとカディムは考える様に黒手袋をした手を口元へやり、

「飴がけの菓子は、手作りするとなると些か手間でございますね。飴は温度が……」

と、飴細工の話や林檎飴の作り方の予想を始める。
そんなたわいもない話を交わす声も、いつしか賑わいの中に紛れて行った。


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【Summer Vacation Part ”Nighttime”】より一部抜粋



(以下PL)
 







この島で二度目の『夏休み』。
一行は人気のない浜辺に来ていた。
休日を満喫する為の贅沢な一日。

去年も楽しかった。
けれど、今年はもっと楽しい。
そう思いながらハイダラは、カディムが用意した大きなパラソルの下でにこにこと、海とそこで波間に戯れるレンジィを見ていた。

彼が水着を借りて来た時、ハイダラは、彼が去年よりも『楽しもう』としている事、そして『無意識に、楽しむ方向へ視線を向ける事が出来た』事を、何となく悟った。
それはとても良い事の様に思われて、自然笑みが浮かんでしまう。支度をするカディムの「御機嫌でございますね」という言葉にも、笑顔のままこっくり頷いたくらいだ。

『ハイダラは、本当に入らなくて良いの?』
「水は大好きなんだけれど、塩がねえ」

同じく浜辺で寛ぐ組であるロージャが、ほわりと光る。
瑞々しい銀色の柄を撫でながら、ハイダラは肩を竦めた。

『塩? 海水の?』
「うん。ぺたぺたするし、飾り達も塩に弱いものがあるから。それと少し太陽が強過ぎるかな。日焼け、というんだっけ? あれは痛い」
『日焼けかあ。カディムは日焼け、平気なのかい?』
「それほど、気になった事はございませんね。案外、絨毯の時の方が、退色を気にしなくてはならないのかもしれません」

微かに笑いながら冗談を口にするカディムに、ロージャも笑う。
海ではレンジィがすいすいと水を掻いて泳いでいた。気持良さそうな様子に、ハイダラが声をかけた。

「レーン! レンジィ!」

気付かない。余程楽しいのだろう。口元が綻ぶ。
青い海と戯れるレンジィの姿は、成る程、水の魔術師の名に相応しい。些か童心に返った魔術師と言うべきか。ハイダラは軽く手を上げて振りながら、もう一度、

「レンー、そっちはどうー?」

今度は聞こえたようだ。レンジィが立ち上がり、浜に向かって叫び返して来た。

「すっ、ごい、楽しい! 涼しくて気持ちいいぞー!」

声の調子からも楽しんでいる事が分かる。笑いながら手を振り合う。カディムは眩しげに目を細め、海面と天頂と太陽の位置で時刻を計りつつ、ハイダラやロージャのこまごまとした世話をする。
ロージャもふわりふわりと柔らかく光っていたが、そのうち、ちかり、ぺかり、と不規則に光りだした。どうやらレンジィと念話で話をしているようだ。(ロージャは、ある程度の距離であれば、離れていても念話——テレパシー——で会話をする事が出来る)

「おいロージャッ! 俺一人だって色々できるぞ、見てろよッ!」

その会話に端を発しているのか、急にレンジィが叫んだ。
驚いたハイダラとカディムの視線の先で、ゆっくり、ゆっくり、海面の一部が盛り上がり始める。柔らかな感触を覚えそうな水の曲線。魔力の波動が伝わって来る。

「……あれは!」

見る見るうちに、海から巨大な鯨の頭が突き出した。
水の鯨だ。
青みを帯びて透き通った水の塊が、生き物の形を模して浮かび上がって行く。
まるで、己の泳ぐべき場所は空であるという様に。

「……大きい。……これは、御見事な」

カディムの言葉通り、見事な光景だった。
巨大な鯨が涼しげに尾を上下させ、身体を僅かに揺らして、海の上、数メートルのところを回遊し始めたのだ。
レンジィがその鯨を背に振り向いて、笑った……、と、その時。


『馬鹿ッ! 集中を解くなッ!』


強く光ったロージャの声は、余程強い念話だったのだろう。ハイダラにもカディムにも伝わってきた。
そして次の瞬間、

ドッパアアアン!!

響き渡る盛大な破裂音。
夏の陽光を反射して飛び散る飛沫。
巨大な鯨は、巨大な滝となって、生まれ故郷の海へ帰還を果たした。


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【Summer Vacation Part ”Daytime”】より一部抜粋



(以下PL)
 
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消えてしまった手紙と日々の覚え書き
  • ENo.1457
ハイダラ。
白灰色の男が呟く独り言。
時折、夢も見ている。

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