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白灰色の畔
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【Vol.1】(アルジャンのブログへ)


 夏の海はきらめく光に満ちていた。
 巨大な入道雲が白き山のごとくそびえ立ち、天空に座する太陽はみなぎる力を惜しげもなく注ぎ、地上にあるものたちを区別なく焦がして行く。

「暑くはございませんか?」

 側に控えていたカディムが、微かに気遣わしげな声音で訊ねた。海から少しだけ離れてしつらえた場所で、ハイダラは日除けの布の下にいた。強い日差しはあまり得意ではないので、最初から居心地の良い場所で寛ぐ作戦だ。もちろん陽光で灰になってしまうような事はない。単純に暑いのと眩しいのと日焼けが嫌いなのだ。

「暑いけれど、まあ、問題ないね。見てご覧、あそこ」

 軽く顎で示した先の渚では、レンジィとアルジャンが歩き回っていた。泡立って打ち寄せる漣の波頭に足先を洗われながら、時折腰を屈めたりしている。

「ああ……、楽しそうなご様子で」

 波音と一緒に、小さく話し声が聞こえてくる。カディムの言う通りそれは楽しそうでのんびりとして、時に軽やかな笑い声が混じった。主従はその光景を眺めつつ、少し笑った。

「何を拾っているんだろう? 貝? ガラス?」

 以前夏の海で拾った宝物を思い出しながらハイダラが呟くと、カディムが頷いた。

「はい。おそらく貝殻やガラスでございましょうね。ハイダラ様も波打ち際へお出ましになりますか?」

「うーん、綺麗なものを拾いたいのはやまやまだけれど、日差しがなあ」

 太陽は真鍮の鏡のようだ。光球は円を描き、高く上った極みからぎらぎらと照りつける。今は昼前。多分これからもっと暑くなる。

「お召し上がりになりますか」

 静かな所作で差し出された盆には、魅惑的なものが乗っていた。

「ふふ、ありがとう。中から冷やさないと追いつかない」

 素直な礼の言葉に、カディムは気付かれない程度に僅かに目を細める。主から賜るねぎらいの言葉は、どんな簡単なものであってもやはり嬉しい。
 露の浮いたグラスを受け取ったハイダラが、よく冷えた飲み物を口に運ぶ。喉から腹まで、体内を涼しく心地良いものがすっと流れた。

 沖から潮風が吹き、梢に張った日除けの布が柔らかく揺れている。
 ハイダラの髪も外套もゆるく掬われ、大量に身につけた飾りがしゃらしゃらと音を立てる。

「……妙な気配だ」

 ひとり言のような声に、カディムがハイダラを見る。

「……島が」

「御意」

「あちこちの波打ち際で夏休みを楽しんでいるもの達の気配は心地いい。……けれど、多分、皆、……レンもアルジャンも、気付いている。……今は考えても仕方のない事かもしれないが」


 光が分解されて、小さな影一つ一つに淡い紫色や緑が生まれる。
 ゆるゆると踊る淡い光の欠片たちは、全てを甘く儚く彩っていた。



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Summer Vacation 2009 【Vol.1】

Special Thanks!
企画:Summer Vacation
   ジャフティ-JJ(217)さん

出演:レンジィ(176)さん
   アルジャン(381)さん
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消えてしまった手紙と日々の覚え書き
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ハイダラ。
白灰色の男が呟く独り言。
時折、夢も見ている。

メモや日記の保存など。非同期型ネットゲームに参加したり色々と。
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